絶望は愚者の選択


by beautiful_japan
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■月が昇って来るのを私はいつまでも待っていた■

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Sister Moon 09/25 PM18:00

兄さんがいたキャンプは敵のロケット砲にやられて皆死んでしまったと言う噂を聞いてから3年後私は難民としてこの国にやって来た。兄さんと別れたのはお父さんが目の前で撃ち殺されお母さんやお姉さん達がどこかへ連れて行かれた頃だからもうずいぶん昔の話だ。

戦争はお母さんが子どもの頃から続いていたので私はこの国に来るまで平和の意味がよくわからなかった。平和って言うのは地雷の代りに花が植えられる事だ。平和って言うのはお腹いっぱいご飯が食べられる事だ。私はいつもずっとお腹がすいていた。だからご飯をお腹いっぱい食べられるのはとても幸せだ。それに銃声にビクビクしなくてもいいのが平和なんだ。この国でもたまに銃声はするけどそれはとても小さい。

けれど今でも夢の中で大きな銃声を聞く。お父さんの頭が吹き飛ばされて血まみれになったあの日の夢だ。そんな悲しい気持の時私は夜空を見上げるのが好きだった。でもこの国の空はとても小さい。星も月もよく見えないのだ。空を見上げても見えるのはビルばかりだ。あのビルの上の方にはお金持ちが住んでいるらしい。きっとあそこからは星も月もよく見えるに違いない。

聖戦で死んだら天国に行けるんだって兄さんは言ってたけど天国はあのビルの上の方にあるのかも知れない。兄さんは今あそこで月を見ているのだろうか?でも私はそんな天国より平和よりもお父さんやお母さんやお姉さん達や兄さんと一緒にお腹をすかせながら見上げる夜空の方が好きなんだ。

むかし夜空を見上げながらお父さんから聞いた話を思い出す。海の向こうにある悪魔の国が月に向ってロケット砲を撃ち込んだ話だ。何てひどい事をする国なんだろうとその時私は思った。「お月さまに向ってロケット砲を撃ち込むなんて!」

その国が兄さんのいたキャンプにもロケット砲を撃ち込んだのだ。それだけじゃない国中のあちこちにロケット砲を撃ち込んでたくさんの人が殺された。そして今私はその悪魔の国に住んでいる。もし今度私が男に産まれて来たら絶対にあのビルの上の方にロケット砲を撃ち込んで星や月がよく見えるようにするんだ!と思いながらビルの上に月が昇って来るのを私はいつまでも待っていた。(2001.10.25 up)

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by beautiful_japan | 2007-09-25 19:19 | 宗教 vs グローバル化